決済当日は買主、売主、不動産仲介業者(仲介業者がいる場合)、融資先銀行の担当者(買主が融資を利用して購入する場合)、司法書士が集まります。
司法書士としては、登記手続を滞りなく進めることは当然ですが、再度これだけの当事者に集まってもらうのはなかなか大変なので、決済を延期したり中止するようなことは避けなければなりません。
決済を妨げる不測の事態が起きていないか、決済当日の立ち会い前には必ず最新の登記情報を確認し、差押えが入っていないかを確認します。通常の売買であれば突然差押えの登記が入ることは考えにくいですが,任意売却のように借金の返済のために売却する場合には,税金の滞納等で突然差押えの登記が入る恐れがあります。
滞納税金の差押えの登記を抹消するためには滞納税金を完済する必要があります。そのため、すぐに抹消することが難しく、決済は必ず延期になってしまいます。さらに、結局支払えないということになれば、最終的に決済自体中止になってしまいます。
なお,当初から差押えの登記が入っている場合において、当事者が事前に差押え債権者と話をまとめてから任意売却する場合には、決済の場で抹消書類の交付を受けることが可能となり、決済を実行する(抹消登記をし、所有権を移転する)ことができます。
事前の書類確認にも注意が必要です。万が一、権利証が無いことが判明した場合,司法書士は本人確認情報を作成する必要があります。事前に権利証が無いことが判明していれば,司法書士が売主本人と面談等をして,本人確認情報を作成します。
実印を紛失してしまった売主の場合、新たに印鑑登録をしてもらい、印鑑証明書を取得してもらう必要があります。登記の委任状に実印で押印してもらう必要があります。
最近実際に依頼を受けた決済において対象となった土地は、年度の途中で畑から宅地へ地目変更した土地でした。既に地目変更されて宅地になっていたため、売買による所有権移転登記申請に農地法の許可書は必要ありませんでした。
仮にこの土地が畑のままで、買主が宅地に転用する場合には、原則として農地法の許可が必要となるため、売買による所有権移転登記の添付書類として「農地法の許可書」が必要となる場面です。
そもそも、農地を宅地等に転用する場合は原則として農地法の許可が必要になります。許可を得ないまま売買契約をしたとしても,その契約は効力が生じません。そして,農地かどうかの判断は登記簿上の記載ではなく,現況によって判断されます。登記簿上「宅地」とされていたとしても,現実的には畑になっている場合,その土地は農地法の適用を受けることになります。
農地法の許可については、その土地が市街化区域にあるのか市街化調整区域にあるのかによって手続が異なります。市街化区域とは,簡単に言えば市街化を推進する区域のことで,名古屋市内のほとんどは市街化区域になります。一方,市街化調整区域は市街化を抑制する地域であり,原則として家を建てることもできません。
市街化区域の場合,市街化を推進する区域のため、農地を宅地として転用するような場合でも許可ではなく単に届出をすれば足りることになっています。登記手続き上は、農地法の届出書(受理書)を添付することになります。一方,市街化調整区域の場合は,農地を宅地として転用する際に許可を得る必要があります。
今回依頼を受けた決済案件では、既に畑から宅地へ地目変更をしていたため、農地法の許可は問題となりませんでした。しかし、宅地としての売買であるにもかかわらず、年度途中での地目変更だったために固定資産評価証明書の地目が「畑」のままとなっており、登記上の「宅地」としての評価がなされていないことから、登録免許税の課税価格が問題となりました。
登記上の地目(宅地)と地積(地目変更後のため、端数あり)が、固定資産評価証明書の地目(畑)と地積(地目変更前のため、端数がない)と異なっていたことから、まず、近傍宅地の評価を固定資産評価証明書に書き入れてもらうよう役所に依頼しました。
登記上、以前の地目は、今回対象となった土地すべてが「畑」でしたが、固定資産評価証明書上の「課税地目」は「雑種地」や「宅地」とされていました。そのため、法務局に確認をし、課税地目が雑種地の土地に関しては近傍宅地の評価を用いて地目変更後の地積をかけて計算し、課税地目が宅地の土地に関しては、固定資産評価証明書上の評価額を用いて地目変更後の地積で計算する、という結論になりました。
以上のように、決済の対象となる土地が農地ではないか、登記簿上の地目および固定資産評価証明書上の地目・課税地目を十分に確認する必要があります。
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