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相続登記事例

所有権移転登記

Aさんのお母様がお亡くなりになり、お母様名義の名古屋市内の土地の相続登記を依頼にご来所されました。お母様から相続した土地には、登記地目が公衆用道路の土地がありました。Aさんには、登録免許税の計算をするため固定資産税の課税明細書か評価証明書の持参をお願いしていましたが、その土地は非課税だったということで評価証明書は取得しなかったとのことでした。

固定資産税・都市計画税(以下、固定資産税等)の課税がされていないからといって、登記する際に課税される税金である登録免許税が課税されないということではありません。

固定資産税等が非課税ならば、非課税証明書を取得して、なぜ非課税になったのか調査する必要があります。今回は名古屋市から非課税証明書を取得してみると、地方税法第348条第2項第5号及び同法第702条の2第2項により非課税でした。つまり、公共の用に供する道路ということで、固定資産税等が非課税でした。

固定資産税等が非課税でも評価額があれば、その額で登録免許税を計算します。今回は、評価額がなかったので、市から非課税の理由を記載した非課税証明書を取得し、それを法務局に持参して、近傍地を指定してもらいました。指定された近傍地の評価証明書の評価額に、今回は公衆用道路でしたので、100分の30を乗じて、登録免許税の課税価格を算出しました(S42.7.22民事甲第2121号参照)。

法務局や市町村によって、対応は異なりますが、固定資産税等が非課税の土地だからといって、登録免許税も非課税と考えないようにすべきです。

このケースでは依頼者のお父様が平成15年に亡くなり、お兄様(未婚・子供なし)も平成18年に亡くなったうえ、平成29年にお母様が亡くなりました。

このご家族は土地と建物を所有していましたが、所有権をご家族4人で共有している状態でした。

依頼者とご家族は、相続登記には登記申請期限がないこと、目先の登録免許税がかかることから、登記申請をしませんでした。

しかし、今回は依頼者のお子様のことを考え、相続登記を依頼いただきました。

お父様の相続では、お父様がお亡くなりになった際に相続人全員で遺産分割協議をしましたが、協議書を作成していませんでした。そこで遺産分割協議証明書を作成することで対応しました。

お兄様の相続では、お兄様がお亡くなりになった時点ではお母様が生存されていたので、数次相続の登記をしました。

最後にお母様の相続では、お母様の登記簿上の住所と死亡時の住所が異なっておりました。除票や戸籍の除附票を依頼人に取り寄せて頂きましたが、住所をつなぐことはできませんでした。そこで、お母様の戸籍の本籍地の確認、依頼者に登記済証を探していただいたものの、登記簿上の住所と死亡時の住所の同一性を証することができませんでした。そこで不在籍不在住証明書、納税証明書を依頼者に取得して頂き、法務局に対してお母様の同一性を称する上申書を作成し、相続登記を完了することができました。

相続登記は期限がありませんが、相続関係者の死亡、証拠書類の散逸などにより、登記をすることが困難になることがあります。登記は権利を映す鑑ですから、権利の変動等があれば、すぐに登記申請をすることをお勧めいたします。

土地の登記済書が見つからない

「私の土地を購入したい人が現れたけれど、土地の登記済証が見当たらない」と同様、土地の登記済証は、登記申請時の必須書類です。
また再発行も認められていません。

このような場合は司法書士が本人確認情報を作成する方法がありますが、別途費用がかかりますので、金銭の授受がない贈与のような場合は、他の方法を選択することも可能です。

その方法とは、まず法務局には登記済証がないまま登記を申請します。その後、法務局から登記義務者(登記済証をなくした人)に、「このような登記が申請されていますが間違いないですか」という内容の書類が登記義務者の住所地に郵送されて参ります。

この書類に署名実印押印し、 法務局に返送すれば、その時点から通常どおりの審査が開始され、登記完了となります。
ただし、書類を返送する期間が定められており、その期間中に返送がされなければ申請は却下されますので、住所地において郵便を受け取れないような事情がある場合は利用できません。

依頼者は相続人の中のお一人からでした。
相続人の中で土地を所有したい方がいなかったため、土地の名義は亡くなったお父様のままになっていました。

もし、土地を購入したい人が現れた場合、相続登記をしないで直接購入者に名義を書き換えられるのか?というご相談にいらっしゃいました。

答えはNOです。相続登記を経ずに、購入者への移転登記をすることはできません。したがって、まず相続登記をする必要があります。
法定相続分どおりに登記するか、遺産分割協議を行い、相続人のうち誰か一人に登記をするか、どちらもメリット・デメリットがあります。

法定相続分どおりに登記する場合

法定相続分どおりに相続登記を行う場合は、購入者への移転登記時に 相続人全員が協力する必要があります。相続人が多数いる場合や、土地の所在地が遠く、購入者との契約・交渉に相続人全員が参加できない場合にはむいていません。
ただし、相続人全員の協力なしには移転登記ができませんので、売買代金等を分けてもらえない等の心配はありません。

相続登記の申請は、相続人のお一人からすることができます。しかし、この場合には申請をした相続人にしか登記識別情報 (従来の登記済証に代わるもの) が通知されませんのでご注意下さい。

相続人のうち誰か一人に登記をする場合

相続人のうち誰か一人に相続登記し、相続人の一人に購入者との交渉を任せるような場合は、他の相続人は手間がかかりません。しかし、契約に関われないため、いつの間にか売買代金の清算が終わっていたというような事態もありえますのでご注意ください。

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遺産分割協議書

 父の相続手続きにあたり、相続人は長男A・長女B、遺産のほとんどが不動産であった。遺産分割協議によりAが不動産を相続し、その他の預貯金等をBが相続することになったが、Bへの相続分が法定相続分の割合に満たないため、AからBへ代償金を支払う旨を遺産分割協議にしました。

 Aの代償金の支払いが一括でできないため、分割払いとする遺産分割になりました。

 代償金の額も高額で分割支払期限も1年後であったので、代償金不払いのリスクを避けるため、このケースではAが相続する不動産に、代償金支払請求権を被担保債権とする抵当権を設定しました。

遺産分割協議書 (例)
第1条 相続人Aは、別紙遺産目録記載の不動産を取得する。
第2条 相続人Bは、別紙遺産目録記載の預貯金を取得する。
第3条 Aは、第1条の遺産を取得した代償として、Bに対して●●●●万円の支払義務があることを認め、これを、下記の通り分割して支払う。
(下記省略)
第4条 Aは、第3条の支払いを担保するために、別紙遺産目録記載の不動産に、Bを債権者とし、債権額を●●●●万円とする第一順位の抵当権を設定し、その旨の登記手続きをする。
登記の目的 抵当権設定
原因 平成〇年〇月〇日遺産分割協議に基づく代償金債権
平成〇年〇月〇日設定
債権額 金●●●●万円
債務者 A
抵当権者 B
設定者  A
添付書類 登記識別情報 登記原因証明情報 印鑑証明書 代理権限証書

相続放棄をした人は、最初から相続人でなかったものとみなされます。そのため、遺産分割協議は相続放棄をした人を除く相続人全員で行います。
遺産分割協議書を用いてする通常の相続登記に必要な書類にプラスして、相続放棄をしたことを証する書面として、家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理『証明書』」を添付して相続登記を行います。

ここで注意すべきなのは、相続放棄を受理した際に家庭裁判所から送られてくる「相続放棄申述受理『通知書』」では、相続登記の添付書類とはならない点です。
相続放棄申述受理「通知書」は1回限りの発行であるのに対し、相続放棄申述受理「証明書」は、手数料1通150円で交付申請することができます。交付申請できるのは、相続放棄をした本人または利害関係人です。
相続放棄をした本人自身が行うのが簡便ですが、その方の協力が得られず相続放棄申述受理証明書を渡してもらえない場合には、利害関係人(共同相続人、被相続人に対する債権者など)から、相続放棄申述受理証明書の交付申請をすることが可能です。具体的な交付申請方法は各家庭裁判所の書式に従うこととなります。

記入

通常、遺産分割協議書には、被相続人を特定する方法として、被相続人の氏名、死亡年月日、最後の本籍を記載します。

ただ、何十年も前の遺産分割協議書には、これらの記載がない場合もお見受けします。

相続登記申請に遺産分割協議書を添付する場合、戸籍等もあわせて登記原因証明情報として提出します。ですので、登記原因証明情報としての要件は充たすと考えられます。

最終的には法務局の判断になりますが、遺産分割作成当時の事情を勘案し、申請可能となる場合がありました。詳しくは当事務所まで、ご相談下さい。

契印とは、文書が一連一体のことを証明するために、差し替えや抜き取りを防ぐため各ページの継ぎ目に押印するものです。

遺産分割協議書においては、契印は必ず必要です。相続人が多数の場合は注意する必要があります。

遺産分割協議書の不動産の表示方法

登記簿に記載されているとおりに記載すれば問題ありません。司法書士が作成する遺産分割協議書の不動産の表示に通常不備はありません。

ただ、税理士さん等が作成された遺産分割協議書の中には、評価証明書に記載されている不動産の内容で書かれたものがあります。

このような場合、相続登記申請の際には、登記簿どおりに訂正することが望ましいです。
ただ、時間が経過していて相続人全員に判を押印してもらうことが難しい場合もあるかと思います。

以下のような登記研究の回答があります。
『不動産の表示として、所在、地番、地目又は所在、家屋番号、種類、構造等の記載があり、かつ、登記簿との同一性が確認できるものであれば、地積又は床面積の記載があにものであってもその申請を受理してよいものとする。(登記研究568号181頁)』

最終的には法務局の判断になりますが、登記簿との同一性が確認できれば、申請可能となる場合があります。詳しくは、当事務所までご相談下さい。

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遺言書

相談者Aさんが、ご友人である甲さんの形式不備の(押印のない)自筆証書遺言をもってこられました。内容は【私(甲)は友人Aに全財産を相続させる】というもの。

遺言書の形式が整っていないので遺贈としては無効であるため、死因贈与として扱うことになりました。(登記義務者は被相続人甲の相続人全員) しかし遺言書には押印がないので登記原因証明情報として使用することもできません。

結局、報告形式の登記原因証明情報を作成し、相続人の方全員に押印していただきました。相続人全員が協力してくれたから良いものの、そうでなければ一大事でした。

メガネ

当事務所グループの弁護士に、公正証書遺言の内容を書き換えたいという依頼をされ、当事務所グループの弁護士が新しく公正証書遺言を作成するお手伝いをした被相続人の方がいらっしゃいました。

民法1022条は「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と定めており、民法1023条1項は「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と定めています。

相続人の方が新旧両方の公正証書遺言をお持ちになりました。新しい公正証書遺言には、付言事項として「本遺言により、遺言者が平成○年○月○日に公正証書によりなした遺言は撤回されたこととなるので付記する」との記載がありました。

遺言書の内容を確認し、新しい公正証書遺言を用いて相続登記を行いました。

なお、被相続人に関して必要となる戸籍謄本については、法定相続分で相続する場合や、遺産分割協議書を用いて相続登記を行う場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要となりますが、遺言書を用いて相続登記を行う場合には、被相続人の死亡時の戸籍謄本があれば足ります。

あまりないケースかもしれませんが、被相続人が遺言書(案)、遺言書の2つを作成していました。遺言書(案)と遺言書、内容は全く同じです。

しかし、自筆証書遺言としての要件を充たしていた、すなわち、押印があったのは悔しくも遺言書(案)と題したものでした。

ある法務局の見解は、遺言書(案)となっている以上、たとえ自筆証書遺言の要件を充たしていても、遺言書とは認められないとの回答でした。題名以外の要件は充たしているのに非常に残念です。自筆証書で遺言を作成する場合は、様式の確認が不可欠です。自筆証書遺言が見つかったら、一度ご相談下さい。

遺言を作成し特定の不動産を相続させる場合、不動産の表示としては登記簿どおりに記載します。

ただ、自筆証書遺言の場合、アバウトに「○○町の土地」と記載している場合があります。被相続人にとっては○○町の土地はまさにそこしかないわけで、特定できているのですが、第三者(法務局)から見ると分かりません。

登記できるかどうかは、最終的には法務局の判断ですが、亡くなった方の意思を最大限読み取ろうとする登記官もいらっしゃいます。

名寄帳等で、被相続人の○○町の土地がこれしかない、と判断していただき、登記可能となるケースもありました。

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