会社の登記相談を受ける場合に、資料として会社の登記事項証明書・株主名簿とともに定款をご用意いただくようお願いしています。
会社法により定款自治が広く認められ、登記事項だけでは会社の状況を把握できず定款規定を確認する必要があるからです。
この際、相談者によっては「設立時の古い定款」をお持ちになるケースがあったり、中には、「定款はどこにあるか分からない」と仰ることもあります。
株式会社の定款は、会社設立時に公証役場にて認証を受けており、原本が一定期間(原則20年間)、公証役場で保管されています。
ですから、保管期間内であれば、公証役場で原始定款の謄本をとることができます。
しかし、会社設立後に定款変更をしている場合は、会社にて変更後の定款を保管することになりますが、会社での保管が不十分な場合、現状の定款規定を把握できなくなります。
この場合は、株主総会において定款変更決議を行い現状の定款を定めることにします。
会社で保管されている定款が会社法への対応がされないままの原始定款であったり、現状の会社組織にあっていない場合の定款の見直しポイントを、まとめてみました。
1 | 整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)によるみなし規定 |
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※非公開小会社(株式の譲渡制限規定があり、かつ資本金の額が1億円以下で負債の額が200億円未満の会社)を想定しています。
①監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨(整備法53条) ②取締役会を設置する旨(整備法76条②) ③監査役を設置する旨(整備法76条②) ④募集株式の発行において募集事項等を取締役会決議によって定めることができる旨(整備法76条③) ⑤旧商法時において、「株券を発行しない」旨の定めがない会社の場合、株券を発行する旨(整備法76条④)
2 | 実情に合わせた定款変更 |
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①株券の廃止
株券があることでのメリット・デメリットをそれぞれの会社の株主構成にあわせて検討し、株券不発行会社にしておくことも一案です。
②機関設計
旧商法時において設立した株式会社の機関設計は、原則、「取締役会(取締役3名以上)+監査役」でした。
員数あわせのため、親族や従業員が形式的に役員となっていることもありました。
適任となる役員を確保できない場合は、取締役会・監査役を廃止して取締役(及び代表取締役)のみに機関設計を変更することをお勧めします。
③役員任期
非公開会社の取締役の任期は、原則、選任後2年内の事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結のときまでです。
これを定款により10年まで伸長することができます。
ただし、任期を10年に伸長することで、役員改選時期を忘れてしまうリスクはあります。
また、任期途中で役員を解任する場合に、正当事由がないと残存任期分の報酬を支払う必要があります。
株主以外の者が役員になっているケースでは任期の定めは慎重に判断いただいた方がよいでしょう。
有限会社の定款については、次回お話しします。
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