財産分与による所有権移転
財産分与とは
離婚に際しては、相手方といろいろなことを取り決めなければなりません。子の親権や養育費、慰謝料などがその代表例ですが、 「結婚生活の中で、夫婦が協力して築き上げてきた財産を清算し、築き上げた財産を分けること」=財産分与 もそのひとつです。
清算的財産分与の対象財産
清算的財産分与の対象となるのは、婚姻中に共同で築き上げた財産ですから、婚姻前から持っていた財産(結婚前に個人で貯めた貯金等)や親から贈与、相続により自分の親から取得した財産は財産分与の対象とはなりません。
もちろん、購入したときの名義が夫であるなど、名義としては夫婦どちらかのものになっているとしても、分与の対象とされます。
また、プラスの財産だけではなく、婚姻生活のためにした借金、例えば住宅ローンなどのマイナスの財産も財産分与の対象となります。
自宅不動産を財産分与によりもらう場合に、住宅ローンの残額の支払いを全て引き受けることがありますが、住宅ローンの名義を相手方に代えるには、銀行である債権者の同意が必要となります。所有権の名義が変更できても、住宅ローンの借入名義(債務者の変更)の変更の難しさがあります。
⇒離婚に伴う、住宅ローンの債務者の切り替えについては、通常金融機関は消極的です。この場合は借換等金融機関を変えて、ローンの組み換えが可能か否かを検討します。
また、住宅ローンなどを引き継がなくても保証人になっている場合は離婚しただけでは保証人のままですので、金融機関と交渉して保証人から外してもらう必要があります。
財産分与は、裁判などで争って離婚するのでなければ、基本的には夫婦2人で決めるものです。
どのように分けるかというのも、2人の自由であると言えます。
財産分与の方法
財産分与は離婚前に行う場合は、当事者の協議による方法、離婚調停や離婚訴訟と同時に行う方法があります。離婚成立後にも財産分与を請求することができますが、離婚成立後2年以内に請求しなければなりません。離婚後に財産分与を行う場合も、当事者の協議による方法と、家庭裁判所に財産分与の調停・審判の申立をする方法があります。
財産分与の登記日付
財産分与の登記原因の日付けは、財産分与の協議が成立した日です。
協議離婚の届出前に財産分与の協議が成立したときは、協議離婚の届出の日になります(登記研究490号)。財産分与は離婚によって発生する効果であり、協議離婚の届出前に財産分与の協議が成立したときは、離婚を条件にその効果が発生するものと解されるからです。なお、協議による離婚は、役所に届け出ることによってその効力を生じます。
(1)財産分与の登記手続(協議により離婚する場合)
協議離婚の場合の財産分与による不動産の名義変更の登記は、両当事者の協力がなければできません。たとえ財産分与協議がまとまってその協議書を作成したとしても、内容によっては名義変更の登記はできません。別に登記用の書類を揃える必要がある場合もあります。
離婚後は別の場所に住み、お互いに赤の他人となってしまいますので、離婚や財産分与協議成立後に不動産を取得する側が登記のための協力を求めても拒否されたり、連絡がとれなくなってしまうこともあります。
財産分与の協議がまとまり、財産分与協議書を作成するのと同時に登記に必要なものを揃え、離婚成立後または財産分与協議成立後、速やかに登記をされることをおすすめします。
なお、財産分与に基づく登記は、たとえ財産分与の協議が成立していたとしても、離婚成立後でなければできませんのでご注意ください。
財産分与の協議が成立していて相手方の協力が得られる場合は、ご依頼により当事務所が相手方と直接、面談や書類のやり取りをすることで手続を進めることができます。これにより、お互いに相手方と顔をあわせないで手続を進める事もできます。財産分与協議書を作成していな場合には、当事務所で作成することもできます。
登記の必要書類
<不動産を譲り受ける方>
- 住民票
- 認印
<不動産を譲り渡す方>
- 不動産の権利証、または登記識別情報
- ご実印
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 固定資産評価証明書
※この他に、住所や氏名の変更登記が必要な場合は、戸籍謄本や住民票等が必要になる場合があります。
(2)財産分与の登記手続(調停などによる離婚の場合)
調停などによる離婚の場合で、調停調書に財産分与の内容が記載されている場合には、不動産を譲り渡す方の協力なしで単独で登記手続をすることができます。
その場合の必要書類は、次のとおりとなります。
- 調停調書正本又は判決正本
- 不動産を譲り受ける方の住民票
- 固定資産評価証明書
- 不動産を譲り受ける方の認印
※この他に、不動産を譲り渡す方の登記簿上の住所と協議日の住所が異なり、住所変更登記が必要な場合は、住民票等が必要になります。調停調書に登記簿上の住所が記載されていても、住所変更登記は省略することできません。この場合、不動産を譲り受ける方が代位で住所変更登記を申請しますので、不動産を譲り渡す方の協力は不要です。
登記費用について
財産分与の登記にかかる費用は、【登録免許税等の実費】と【司法書士の報酬】からなります。
事案、不動産の固定資産評価額及び不動産の数などによって変わります。概算でも費用をお知りになりたい方は、固定資産評価証明書又は固定資産税納税通知書をご用意のうえご連絡ください。
当事務所の報酬(消費税抜き)
所有権移転登記 | 46,000円~ |
---|---|
財産分与等契約書作成手続(必要な場合のみ) | 10,000円~ |
登録免許税について
財産分与の登記の登録免許税の税率は、固定資産の評価額の20/1000となっております。 その他不動産登記情報、不動産謄本等取得の実費が必要となります。