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遺留分減殺による所有権移転

1 遺留分の減殺と対抗要件

遺留分の減殺と対抗要件について、最判昭和35・7・19民集14巻9号1779頁は、次のように判示しています。

「減殺請求により遺留分の限度において贈与が失効し、その限度で遺留分権利者に共有持分が帰属したあと、遺留分権利者が共有持分登記をしない間に、第三者が受贈者から目的物を譲り受け、移転登記を経た場合、遺留分権利者は、その第三者に対し自己の共有持分を対抗することができない」

つまり、遺留分の減殺により、遺留分権利者は、被相続人から遺産を直接承継しますが、遺留分の減殺は意思表示によるものであって、第三者との関係では、受遺者または受贈者がいったん取得した権利について新たな変更をするのと実質上異なりませんので、 遺留分減殺請求後に目的不動産が第三者に譲渡された場合には、転得者と遺留分権利者との優先劣後は、対抗要件たる登記の有無によって決せられることになります。

2 遺留分減殺があった場合の登記手続

(1)相続財産が既に受遺者・受贈者または相続人の名義となっている場合

遺留分減殺請求の対象となる贈与等の目的不動産について、既に受贈者又は受遺者への所有権移転登記、あるいは指定相続分又は 相続させる旨の遺言による相続登記 が経由されている場合において、遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使した場合の登記手続きはどうなるのでしょうか。

【事例】相続人の一人に対する包括遺贈による所有権移転登記がされている場合

配偶者が既に死亡してB、C2人の子があるAが死亡し、Aが、Bのみに全財産を相続させる旨の遺言を残していたため、相続不動産についてB単独名義の相続登記が経由された場合、CがBに対し、遺留分減殺請求権を行使したときは、どのような登記をすればよいでしょうか。

【検討】

BおよびCの共同申請により、登記原因を「遺留分減殺」とし、その原因日付は遺留分減殺請求の意思表示が相手方乙に到達した日として、BからCへの所有権一部移転登記をすることになります。

登記権利者を遺留分減殺請求者C、登記義務者を所有権登記名義人たるBとする共同申請により、登記原因証明情報として、遺留分減殺を証する書面(遺留分減殺請求の意思表示があったことを証する配達証明付内容証明郵便など)のほか、遺留分権利者たる相続人であることを証する戸籍謄本等を提出して行います。

また、共同申請のため、原則として、登記義務者の登記識別情報の提供および印鑑証明書の添付が必要です。また、登記権利者の住所証明書の添付も必要です。

遺留分減殺を原因とする所有権移転登記の登録免許税は、相続に準じ、課税価格の1000分の4です。

【Bが任意の共同申請に応じない場合】

登記義務者であるBが任意の共同申請に応じないときは、遺留分権利者Cは、Bに対し、所有権一部移転の登記手続を訴求し、遺留分減殺による移転登記手続を命ずる確定判決を得られれば、Cが単独で登記を申請することが可能です。その場合には、登記原因証明情報として、判決正本(確定証明書付)を提出することとなります。

(2)相続財産が被相続人名義のままの場合

まず、受遺者と遺言執行者(又は相続人全員)との共同申請により、遺贈による受遺者への所有権移転登記を経由し、次いで、遺留分権利者と受遺者との共同申請により、遺留分減殺請を原因とする所有権一部移転登記をすることになります。

【登記義務者が任意の共同申請に応じない場合】

遺言執行者(又は相続人全員)及び受遺者がそれぞれ任意の共同申請に応じないときは、遺留分権利者は、受遺者に代位して遺言執行者(又は相続人全員)に対し、遺贈による受遺者への所有権移転登記手続を求めるとともに、受遺者に対し、遺留分減殺による所有権一部移転登記手続を求める各訴えを提起し、請求認容の確定判決を得たうえで、単独で順次これらの登記を申請することが可能です。

>> 遺留分減殺請求についてくわしくはこちら

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